「商談で何を話せばいいのか分からない」「毎回トークの内容がバラバラで結果が安定しない」――そんな悩みを抱えている営業担当者は少なくありません。特に、電話営業やオンライン商談が主流になってきた今、短い時間で相手の関心を引き、信頼を得て、商談の次のステップへ進めるスキルが求められています。
そこで重要になるのが、“営業トークスクリプト”の存在です。

スクリプトとは、商談やアポ取りの場面で使うトークの台本のようなもの。これを作り込むことで、
- 初回アプローチの質が安定する
- 自信を持って話せる
- 教育・引き継ぎにも使える といった効果が得られます。
しかし実際には、「どこから作ればいいのか分からない」「例文があっても自社に合わない」といった声も多く、なんとなく形だけのスクリプトになってしまっているケースも散見されます。
本記事では、そんな課題を抱える営業パーソンのために、スクリプトの作成手順から実践例文、活用法と改善のコツまでを一気通貫で解説。これを読めば、明日からの営業トークが“再現性のある武器”に変わるはずです。
トークスクリプト設計の基本:目的・ターゲット・構成
トークスクリプトを作成する第一歩は、誰に・何を伝えるかを明確にすることです。なんとなく話を組み立てても、相手の心には響きません。スクリプトが効果を発揮するのは、「このターゲットにはこの話法が刺さる」という設計思想があるからです。
ステップ1:目的を設定する
まずはスクリプトの目的を明確にします。以下はよくある目的の例です:
- 新規アポの獲得
- 見込み顧客の課題ヒアリング
- クロージング・契約決定
この目的が曖昧なまま話し始めると、「で、何の話?」と感じさせてしまうリスクが高まります。
ステップ2:ターゲットを明確にする
誰に向けて話すのかによって、使う言葉・切り口・トーンが変わります。たとえば、
- 中小企業の経営者向けなら「コスト」「成果」「早さ」
- 大企業の担当者向けなら「リスク」「稟議」「社内調整」
のように、同じサービスでも訴求ポイントは異なります。
ステップ3:構成を設計する
スクリプトの大枠を決める際には、以下のような型を意識すると効果的です:
- 挨拶・名乗り(自己紹介+アイスブレイク)
- 興味喚起(課題提起や共感)
- 提案の要点提示(端的に伝える)
- クロージング(次のアクション確認)
この4フェーズ構成に基づいて、それぞれのステップに具体的な言い回しや例文をあてはめていくことで、スクリプトは“使える形”になります。
初回アプローチで信頼をつかむ:関心喚起と話題設計
どれだけ優れた商材やサービスでも、初回の接点で「興味を持たれない」ことには何も始まりません。特にBtoB営業においては、顧客が忙しい時間の中で応対してくれる数十秒〜数分が勝負。ここで信頼を得られるかどうかが、その後の商談機会を左右します。
初回アプローチのスクリプトでは、以下の3つのポイントを意識すると効果的です。
業界・トレンドを踏まえた話題設定
「最近この業界で注目されているのが〜」といった切り口で始めることで、相手に“この人、情報を持っている”という印象を与えることができます。
たとえば、
- 「リモートワークに対応した営業管理で成果を出す企業が増えています」
- 「多拠点の連携に苦労されている企業様が今、選ばれているのが…」
このように、相手の業界に合わせたトレンド提示が有効です。
共感・課題提起型のトーク例
相手が「それ、うちも同じ」と感じる“共感ワード”は鉄板の導入手段です。
- 「御社のように支店展開されている企業様から“情報共有がうまくいかない”という声を多くいただいてまして」
- 「最近は紙とExcelで業務を回している会社様が、脱アナログを検討されるケースが増えています」
いきなり商品の話をするのではなく、共感→課題→解決という流れを意識しましょう。
初回で使える“会話のフック”テンプレ
初回トークは、すべてを説明しきる必要はありません。それよりも「続きを聞きたい」と思ってもらえるフックが大切です。
- 「すでに導入されているA社様では、業務時間を30%削減できました」
- 「○○業界の中で、成功事例が続出している切り口がありまして…」
このように、“一言で引き込む構文”をスクリプトに組み込むことで、会話の主導権を握りやすくなります。
初回アプローチの成功は、商談全体の流れをスムーズにする“助走”です。
会話ステップ別・実践トーク例と構成のポイント
スクリプトが機能するためには、「どのタイミングで、どんな言葉を使うか」が明確であることが重要です。この章では、商談における代表的な4ステップ(挨拶 → 導入 → 本題 → クロージング)に沿って、トーク例とその狙いを解説します。
挨拶・アイスブレイク
商談の冒頭は、印象が決まる大切な場面です。ここで明るく、相手に安心感を与えることが重要です。
例文:
- 「改めまして、〇〇株式会社の田中と申します。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます」
- 「〇〇様の会社の取り組み、以前からWebなどで拝見しておりました」
ポイント: ビジネス礼儀を守りつつ、「ちゃんと調べてきた感」を伝えることで関係構築がスムーズに進みます。
導入・課題ヒアリング
次に行うべきは、顧客のニーズを引き出すパートです。ここで一方的に話すのではなく、質問を通じて会話のキャッチボールを意識します。
例文:
- 「本日は、〇〇様の現場で今課題に感じられている部分をぜひ教えていただければと思っています」
- 「今、最も優先順位の高い業務改善テーマは何でしょうか?」
ポイント: ヒアリング型の導入で信頼感を獲得すると、本題の提案に入りやすくなります。
提案・ソリューション提示
ここでは、商品やサービスの強みを一方的に語るのではなく、相手の課題に直結した提案を行うことが重要です。
例文:
- 「先ほどおっしゃっていた“作業工数の多さ”に対して、弊社ではこのようなアプローチで支援しています」
- 「御社のように多拠点管理をされている企業様には、この機能が特に好評です」
ポイント: 仮説ベースで話すと同時に、事例やデータを交えることで説得力が増します。
クロージング・次のステップ提案
最後に行うべきは、商談を次の段階へ進めるアクションの提示です。
例文:
- 「もしご興味がありましたら、実際の画面で操作をご覧いただけるデモを次回ご案内できます」
- 「来週、社内で検討いただく資料もすぐにお送りします」
ポイント: 「話して終わり」ではなく、具体的な次のアクションを提案して終えることが営業成功への鍵です。
この4ステップの構成に従ってスクリプトを設計することで、営業トークの質と成果は大きく変わります。
スクリプトの活用と改善サイクル:現場で“生きる”仕組みを作る
どんなに優れた営業スクリプトでも、作って終わりでは意味がありません。現場で使われ、改善され、組織内に共有されてこそ、“成果を生む営業資産”になります。この章では、スクリプトを「活用→改善→標準化」していくための実践的な方法を紹介します。
ロールプレイで実践的に落とし込む
完成したスクリプトは、まずロールプレイで試してみましょう。営業担当同士が“営業役”と“顧客役”を交代で演じることで、文章では見えなかった課題が浮き彫りになります。

ポイント:
- 実際に声に出してみると、不自然な言い回しや言いにくい構文が明確になる
- フィードバックを通じて、改善点をチームで共有できる
- 新人育成にも有効(OJTの事前練習として機能)
PDCAサイクルで定期的に見直す
スクリプトも“使いっぱなし”では形骸化します。商談の録音やアポの結果データをもとに、定期的にブラッシュアップしましょう。

- Plan(設計):ターゲットと目的に応じて構成を再設計
- Do(実行):営業現場で使用し、成果を記録
- Check(評価):商談化率やCVRなどの数値で分析
- Action(改善):結果に応じて台詞や順番を修正
たとえば、アポ獲得率が下がってきたときは「冒頭トークが古くなっていないか」「競合との差別化ポイントが弱まっていないか」を点検します。
営業チームでの共有と標準化
成果の出たスクリプトは、属人化させずにチーム全体の武器へ昇華させる必要があります。ポイントは以下の通りです:
- スクリプト例文を営業マニュアル・ナレッジツールに掲載
- 社内勉強会で事例共有+改善ワークショップの実施
- 定期的に「ベストトーク」を表彰・公開
こうした取り組みを継続することで、営業組織としての“話す力”が底上げされます。
「スクリプトを作る」から「スクリプトを育てる」へ。営業成果を生み出すには、スクリプトを組織で運用・改善する文化づくりが不可欠です。

スクリプトは“成果を再現する装置”
スクリプトは単なる台本ではなく、「成果を再現するための仕組み」です。個人のトークセンスに頼るのではなく、誰が使っても一定の成果が出せる型をつくることが、営業組織の成長を加速させます。
- 初回トークで興味を引く導入構成
- 会話の流れに即したフェーズ別トーク
- 組織で運用できる改善と共有の仕組み
この3つが揃えば、スクリプトは単なる“使い回しの資料”ではなく、営業成果を支える戦略資産になります。
今日からぜひ、チームでスクリプトを見直し、「成果の出る型」を育てていきましょう。
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