「顧客の要望を丁寧にヒアリングし、最適な提案をする」――これまでBtoB営業の基本とされてきたこの姿勢が、近年、見直されつつあります。背景にあるのは、購買行動そのものの変化。顧客はすでに膨大な情報を持ち、課題もある程度自分たちで把握しています。

そのため、従来の「ニーズ対応型」の営業スタイルだけでは、成果につながりにくくなっています。代わりに注目されているのが、“チャレンジャー型”の営業パーソンです。
チャレンジャー型とは、顧客に寄り添うのではなく、あえて仮説や新たな視点を提示し、思考や戦略に揺さぶりをかけるスタイル。ときに顧客の前提を否定することすらありますが、だからこそ「信頼できるビジネスパートナー」としての地位を確立できるのです。
この営業アプローチは、2024年以降のBtoB市場で成果を上げるうえで欠かせない要素となりつつあります。本記事では、そんなチャレンジャー型営業の特徴と実践ポイントを、具体例とともに解説します。
顧客に“挑戦”する営業スタイルとは
チャレンジャー型営業の最大の特徴は、顧客のニーズにただ応えるのではなく、顧客の視野を広げ、思考の枠を越えさせるアプローチにあります。これは「押し売り」や「説得」とは全く異なり、相手のビジネスに対する洞察や仮説を持って提案する、いわば“プロの異見者”という立場です。
顧客への「挑戦」が意味するもの
「このままでいいのか?」「もっと大きな成果を狙える視点はないか?」といった形で、顧客が持つ常識や戦略に対して建設的な異論を投げかけるのが、チャレンジャー型営業です。
たとえば、
- 顧客が当初想定していなかった課題をあえて指摘する
- 他社の事例や業界動向を踏まえた“よりよい選択肢”を提示する
- KPIやROIといった数字で新たな判断基準を提供する
こうした姿勢は、最初は驚かれることもありますが、本質的に顧客の成果を思っているからこその提案であると伝われば、むしろ強い信頼関係に発展します。
なぜ今「挑戦」が求められるのか
2020年代のBtoB購買では、顧客自身がある程度の情報収集や比較検討を済ませた状態で営業と対峙するケースが一般化しています。そのため、営業担当者が単に説明をするだけでは「価値がない」と見なされてしまうのです。
だからこそ営業は、“情報を届ける人”から“視点を変える人”へと進化する必要があります。
チャレンジャー型の成果事例(一例)
製造業向けITソリューションを提案する企業では、既存顧客に対し「御社の工場DXは本当に進んでいますか?」と切り出すチャレンジングな提案を行ったところ、通常の更新案件が新規大型案件に発展したという事例があります。
営業は顧客に“安心”だけでなく“変化”をもたらす存在であるべき――それが、2024年の営業トレンドの中核です。

カスタマイズされた提案で信頼を勝ち取る
チャレンジャー型営業において重要なのは、テンプレート通りの提案を脱却し、顧客ごとに深く踏み込んだ“カスタマイズ提案”を行うことです。
なぜ画一的な提案は通用しなくなったのか?
以前は、ある程度汎用的な資料やスクリプトでも「丁寧に説明すれば通る」営業が成り立っていました。しかし現在では、顧客自身が類似提案を複数受けており、差別化されていない営業は“その他大勢”として埋もれてしまう傾向にあります。
提案を“仮説ベース”で作る
チャレンジャー型営業では、顧客から与えられた情報だけを頼りにするのではなく、事前に以下のような仮説を立てて提案に組み込みます:
- 競合製品と比較したときの本質的な優位性はどこか?
- 現状のやり方を続けた場合、どんなリスクがあるのか?
- 業界の未来を踏まえたとき、この提案がなぜ必要か?
このような仮説があることで、顧客は「この営業は私たちのことを本気で考えている」と感じるようになります。
“その会社のためだけ”の提案構成
カスタマイズ提案を構成する際には、以下の要素を意識しましょう:
- 顧客の課題・背景に即したストーリーテリング
- 対応メンバーや現場の状況まで踏まえた提案方法
- 数値や図を使ったビジュアル化による説得力の強化
これにより、提案が単なる説明ではなく、「導入後の姿まで描けるコンサルティング」に昇華します。
成功事例
人材業界のSaaS企業では、初回提案で顧客の社内稟議フローを逆算したスケジュールと運用設計を提示。結果として、「導入後のイメージが一番明確だった」と評価され、競合を抑えて契約獲得に至りました。

「この営業は、わが社専任の担当者だ」と思ってもらえる提案力こそが、チャレンジャー型営業の信頼の源です。
顧客と対等に向き合うコミュニケーション力
チャレンジャー型営業を支えるもう一つの柱が、「対等な関係構築」に基づくコミュニケーションです。営業はサービス提供者であると同時に、顧客の成功にコミットするパートナー的存在。そのためには、相手の顔色を伺うのではなく、ビジネス視点で堂々と意見交換できる関係性が求められます。
「共感と主張」を両立させる
単に自分の意見を押し通すのではなく、相手の考えに耳を傾けつつ、自分の意見をきちんと述べる。これがチャレンジャー型営業の基本姿勢です。
たとえば、
- 顧客の発言を要約し、「つまりこういうことですね」と確認する
- 一通り聞いた上で、「私の考えではこうです」と論理的に返す
- 意見のズレは避けずに共有し、目的に照らして擦り合わせる
このように、議論を恐れず、建設的な対話を重ねることが信頼につながるのです。
「説明」ではなく「共創」へ
チャレンジャー型営業は、製品・サービスを一方的に紹介するのではなく、顧客と一緒にゴールをつくり上げていくスタンスを取ります。そのために重要なのが、次のようなスキルです:
- 質問力:顧客の本音や懸念を引き出す深掘りの問い
- 要約力:話の核心を正しく把握し、簡潔に伝える力
- ストーリーテリング:提案が“その会社の未来像”として伝わるよう構成する
情報を「翻訳」する力も必要
とくにIT系や専門性の高い商材を扱う場合、チャレンジャー型営業は複雑な技術情報を、顧客の業務視点に置き換えて伝えるスキルも求められます。
- 「このツールはAIで分析します」ではなく、「この機能で営業会議の準備時間が3割削減されます」
- 「API連携が可能です」ではなく、「顧客管理のデータが自動反映されます」
このように、“何ができるか”ではなく“どう変わるか”を語れることが、営業としての価値を高めます。
対話の質が“最後の決め手”になる
複数の提案が並ぶ中で、最終的に「この人と一緒にやりたい」と思わせるのは、情報の多さや価格ではなく、対話の積み重ねで生まれる安心感と納得感です。

「この人と話していると、未来が描ける」――そう思わせられる営業こそが、成果を生むチャレンジャー型営業の本質です。
まとめ|2024年以降の営業に求められる姿とは?
これからのBtoB営業で求められるのは、単なるニーズ対応ではなく、顧客の戦略に“揺さぶり”をかけるプロフェッショナルです。
- 顧客にとって耳の痛いことも言える勇気
- 決まりきった提案を超える、仮説と構想力
- 対等な目線で共にゴールを描くコミュニケーション力
これらを備えたチャレンジャー型営業こそが、これからの市場で選ばれる存在になるでしょう。
商談のたびに“顧客に価値の再定義を促す”。そんな一歩先の営業を、ぜひあなた自身のスタイルとして取り入れてみてください。
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