「この商品、欲しいな」
「この人の提案なら納得できる」
営業において、こうした言葉が自然に顧客の口から出る瞬間があります。その時、成約はほぼ決まったも同然です。
では、どうすれば顧客から“買いたい”という気持ちを引き出すことができるのでしょうか?その答えは、「データによる理解」と「体験価値の提供」にあります。
本記事では、営業現場で成果を上げるために欠かせない「顧客の購買心理を動かす技術」について、4つのステップに分けて解説します。トレンドや実践的なテクニックも交えて、読後すぐに活用できる内容に仕上げました。

なぜ今、“買いたい”を引き出す営業が求められているのか?
かつての営業は、商品のスペックを説明し、価格を提示して、クロージングをかけるという“商品中心”のスタイルが主流でした。しかし今、顧客は営業を待たずに情報を収集し、比較し、自分で意思決定を行うようになっています。
このような変化により、営業の役割は「売り込む人」から「買う理由をつくる人」へと変わりました。特にBtoB領域では、複数の関係者が関わる意思決定プロセスが一般的であり、「誰かの納得」が起点にならない限り、導入は進みません。
そこで重要となるのが、顧客の“買いたいスイッチ”を押す営業術です。
顧客の行動データから“今”を読み解く:インサイトを可視化する力
■ なぜデータが必要なのか?
営業において「経験と勘」は無視できない武器です。しかしそれだけに頼ると、顧客との間に“ズレ”が生じやすくなります。現在では、SFA(営業支援ツール)やCRM(顧客管理システム)など、あらゆる行動データを取得・活用できる時代です。
営業担当者がこれを活かさない手はありません。
活用できる具体的なデータ項目
- 資料のダウンロード履歴
- メールの開封率・クリック率
- サイト内での回遊履歴(閲覧ページ・時間)
- ウェビナーや展示会の参加状況
- 過去の商談・問い合わせ履歴
これらの情報を掛け合わせることで、「この顧客は今、どんな課題に興味を持っているか」「比較検討のどの段階か」といったインサイトが見えてきます。
実践Tips:インサイトをもとにしたトークの例
「先週〇〇のページをご覧になっていましたね。御社のように支店が多い企業にとって、遠隔支援機能は特に効果を発揮します。現在、教育やサポートでお困りの点などありますか?」
これは、相手の行動を前提にしたアプローチ。的確なタイミングとメッセージであれば、営業は“押し売り”から“相談相手”へと変化します。
“自分ごと化”の演出:体験価値で心を動かす
「機能」ではなく「変化のストーリー」を伝える
多くの営業資料は、製品の特徴や優位性を“箇条書き”で紹介しています。しかし、顧客の心を動かすのは、事実よりも「どう変わるか」の物語です。
たとえば、以下のような違いを見てみましょう。
NG例:
「弊社のサービスはAI機能を搭載し、〇〇の自動化が可能です」
OK例:
「この機能を導入したことで、現場の教育にかかっていた時間が月40時間から12時間に短縮され、担当者の負担が劇的に軽減されました」
前者は情報提供、後者は体験の共有です。“聞き手が自分の業務に置き換えてイメージできる”提案が、強力な説得力を持ちます。
AI Shortsの事例:静的資料を“話す資料”に変える効果
弊社のAI Shortsでは、PowerPointやPDF資料を元に、AIが自動でナレーション付きのスライドショーを生成します。この「話す資料」によって、次のような効果が得られました。
- 営業提案の事前視聴率が42%増加
- 商談の準備時間が1/3に短縮
- 導入説明の属人化が解消
これは単なる動画化ではなく、“顧客が体験できる営業資料”へと進化させた好例です。

「共感」と「比較」で意思決定を後押しする
共感を生むのは“他社の成功”と“同じ悩み”
人は他人の体験から学びます。特に同じ業界や同じ規模の企業が成功していると、「自社でも再現できるのでは」と感じやすくなります。
成功事例のストーリーフォーマット
- 課題の提示:「代理店教育に時間がかかり、情報の伝達にムラが出ていた」
- 導入の経緯:「営業資料を話す動画に変え、閲覧しやすい形で配布」
- 成果の見える化:「受注率が2割改善、代理店側からの問い合わせも減少」
こうした構成で話すことで、相手の納得感が大きく高まります。
他製品との比較では「定量化」が重要
競合製品との違いを伝える際は、数値で示すことが大切です。
「他社の動画生成サービスは1件あたり平均45分ですが、AI Shortsなら3分で完了。月間20本のコンテンツ制作で、約14時間の削減になります」
こうした定量比較は、情シスや決裁者に響く“合理的な判断材料”となります。
“あなた専用の提案です”と思わせる個別最適化
どれだけ優れた製品でも、「他社と同じ提案ではないか?」と感じられた瞬間、顧客の関心は冷めてしまいます。ここで求められるのは、「この提案は自社専用だ」と思わせるカスタマイズです。
3階層のパーソナライズ
- 業種別:小売業なら売場支援、製造業なら教育やマニュアル
- 役職別:現場責任者には運用イメージ、経営層には投資対効果
- 課題別:OJT支援、代理店教育、提案効率の改善など
1ページ目から“あなた向け”を演出する
提案資料の1ページ目に「御社の〇〇課題に対応する提案です」と記載するだけで、印象は大きく変わります。顧客は、「この営業は本気だ」と感じるのです。
【実践例】買いたいを引き出すトークスクリプト
NG例(機能偏重)
「こちらは動画に自動でナレーションをつけるツールです。操作は簡単ですし、コストもリーズナブルです」
OK例(データ+体験+比較+共感)
「先週ダウンロードされた『代理店向け営業資料』を拝見しました。御社のように販路が広く情報共有に課題を感じている企業では、“話す資料”を活用することで、担当者の工数が月20時間削減できたケースもあります。他社製品だと動画作成に時間がかかる点がネックですが、AI Shortsでは平均12分で作成可能です。実際、同業の〇〇社でもこの仕組みに切り替えて、2ヶ月で営業提案の成約率が28%向上しました」
このようなトークができれば、顧客は“自分の未来”を具体的にイメージでき、「買いたい」という感情が芽生えます。
【まとめ】営業は「売る」から「導く」へ。顧客の行動を変える営業術
営業において最も重要なのは、「話がうまいこと」でも「商品知識が豊富なこと」でもありません。それらは“手段”にすぎず、本質は「顧客の感情と行動を変えること」にあります。
今回紹介した4つのステップを改めて確認しましょう。
✅ データで理解する
顧客の行動や課題を“可視化”して、提案の根拠を明確にする
✅ 体験価値で心を動かす
機能ではなく「変化」をストーリーで伝える
✅ 共感と比較で納得を生む
他社の成功と数値的な差で意思決定を後押しする
✅ カスタマイズで特別感を演出
テンプレではなく、相手の状況に合わせた「あなた専用の提案」
これらを実践すれば、営業の質は確実に変わります。
営業は、もはや“売る仕事”ではなく、“未来を共有する仕事”。顧客の“買いたい”を自然に引き出す営業術を、あなたの武器にしてください。