
はじめに:市場の成熟と営業スタイルの変遷
インターネットとクラウドが浸透しきった現在、顧客は製品仕様・価格比較・ユーザーレビューをワンクリックで取得できます。検索エンジンや比較サイトの充実により、かつて営業担当者が独占していた製品情報はコモディティ化しました。むしろ顧客は「似たような機能なら、誰と パートナーを組んで課題を解決するか」を重視します。ここで言う“誰”とは個別の営業パーソンだけでなく、提案のストーリーや導入後の伴走体制までも含んだ総合的な“体験価値”です。
購買委員会の大型化と合意形成の難易度
BtoB 企業が導入検討するソリューションの単価は年々上昇し、組織横断プロジェクトが主流になりました。結果として、購買プロセスには IT、現場部門、法務、経営層など平均して 7〜10 名の利害関係者が関与します。それぞれが異なる KPI と意思決定基準を持つため、単純な機能説明だけでは合意が得られません。提案営業が価値を発揮するのは、複数部門の視座を統合し、共通の成功物語を構築できる からにほかなりません。
御用聞き営業の終焉と提案型営業の台頭
「御用聞き営業」は顧客の要望をヒアリングし、要件に合う製品を提示するスタイルでした。この手法が有効だったのは、製品情報の非対称性と購買決裁の単線型構造が前提にあったからです。しかしその前提は崩壊しました。
顧客はすでに“解決策の候補”を頭に入れており、残されたギャップは「自社課題にフィットするか」「ROI が立つか」の2点。提案型営業はそのギャップを埋める専門職として進化し、課題の再定義と導入後成果までのストーリー設計 を武器に、購買委員会の合意形成をリードしています。
提案営業の本質
“顧客の物語”を共創するアプローチ
提案営業の根底には「顧客を主人公に据えた物語づくり」があります。営業担当者はヒアリングを通して課題を抽出・言語化し、その原因を業務プロセスや組織構造まで遡って分解します。こうして得られた課題構造に自社ソリューションを埋め込み、“現在地→乗り越える壁→到達する理想の未来” を一本のストーリーとして提示するのです。

ここでは単なる製品説明ではなく、導入フェーズ・定着フェーズ・拡張フェーズまでを見据えた「実行可能なプラン」が欠かせません。
提案営業が生み出す三つの経営的リターン
- 顧客満足と長期取引
顧客の本質課題に寄り添うため、導入後の期待値ギャップが小さく、サポート負荷も軽減。これが結果として LTV 向上と解約率低下に直結します。 - 高利益率の維持
競合との差別化軸が「機能」から「成果ストーリー」に移るため、値引き要請の頻度とインパクトが抑えられます。高単価プランや周辺サービスの組み込みもスムーズです。 - 組織知の資産化
課題分析テンプレート、ROI モデル、業界別成功事例が営業組織に蓄積され、OJT だけに頼らない再現性の高い営業プロセスが構築されます。
ソリューション営業・コンサルティング営業との違い
ソリューション営業が“課題+自社製品の組み合わせ”を中心に据えるのに対し、提案営業はさらに一歩踏み込み、導入定着と効果最大化までを伴走する計画 を必須要素とします。
またコンサルティング営業が“課題解決策の設計”で終わることが多いのに比べ、提案営業は自社リソースによる実装責任を負っている点で差異が生まれます。
要するに、提案営業は「課題発見→解決策設計→実装→成果検証」のフルファネルを請け負う総合格闘技なのです。
提案営業プロセスの全体像──3ステップで捉える
ステップ1:顧客課題の発見と仮説立案
- 環境分析
決算短信・業界誌・IR カンファレンス資料を読み込み、売上構造や投資計画の変化点を抽出。 - 組織図の推定
LinkedIn やプレスリリースを手がかりに、誰がキーマンかを可視化。 - ヒアリング用仮説メモ
「××プロセスに△△時間のロスがあるはず」といった仮説を箇条書きにしておき、初回訪問で検証。
仮説提示型のヒアリングは顧客に“気づき”を与え、短時間で深い情報を引き出します。質問は「御社の課題は?」ではなく「昨年度の棚卸しコストが 15 % 増加していますが、工程細分化が進んだ影響でしょうか?」と具体的に切り込みます。
ステップ2:解決策の設計と価値検証
- マイルストーン化:大規模プロジェクトを 3 段階(PoC/本番導入/展開拡大)に分割し、早期に成果を見せる。
- ROI 三面評価:コスト削減・売上増・リスク低減を併記し、定量―定性両面で説得力を担保。
- 外部アライアンスの活用:自社で補えない領域はパートナーと連携し、ワンストップ体制を演出。
ステップ3:提案実行と PDCA フォロー
導入支援では、顧客側の“導入担当者”が孤立しないよう、キックオフミーティングで役割と責任範囲を明確化。KPI ダッシュボードは共有クラウド上に置き、リアルタイムで閲覧可能にします。月次レビューでは 「実績→差異→改善策→次月目標」 の順に整理し、改善サイクルを途切れさせません。営業パーソンが PDCA をリードすることで、顧客は“課題が発生しても改善してくれる”という心理的安全性を獲得し、結果としてリピートやアップセルの打診が自然に生まれます。
提案営業を強化する4つのコアスキル──“習得→実践→検証”の回転力を高める
ヒアリング&質問設計──“情報採掘”ではなく“洞察の共同発掘”へ
ヒアリングの目的は「情報収集」ではなく「顧客と洞察を共創する」ことにあります。

たとえば製造業クライアントのケース。
初回面談で「現場の歩留まりが低い理由は何ですか」と聞いても担当者は即答できません。そこで事前に公開データを分析し、「生産計画が週次更新なのにライン変更は月次のため、調整遅れが出ていませんか」と仮説を差し出す。顧客が「そこは気付いていなかった」と乗ってくる瞬間、洞察が共有財産になります。
- 過去のヒアリング録音を 2 倍速で聞き返し、質問の粒度をエクセルに書き起こす。
- 抽象→具体→数値→示唆”の順に並べ直し、来週の訪問で検証。
- 商談後 24 時間以内にフィードバックメモを上司と共有し、成功質問・失敗質問を分類。
このサイクルを 10 回回せば、質問設計は“勘”から“資産”になります。
ストーリーテリング──意思決定者の“腹落ち曲線”を描く
ストーリーの骨格は “Why Change → Why Us → Why Now” の3段構えが鉄板です。
ここで“Why Change”を外すと、どれほど優れたソリューションでも「現状維持でいいのでは」という反論が消えません。たとえば SaaS サブスクリプションの提案なら、「オンプレ運用の総コストが5年で約1.6倍に膨張し、人的冗長構成も維持困難になる未来」をビジュアル化し、変化の必然性を刻印します。そのうえで自社の独自優位性 “Why Us” を短く差し込み、最後に「年度末決算前の投資判断で 12 か月目に ROI が陽転する」シミュレーションを提示して“Why Now”を締めくくる。この連射速度が腹落ち曲線を一気に立ち上げるコツです。
データドリブン思考──数値モデルを“再利用可能な部品”にする
提案営業で扱う数字は、売上・コスト・時間短縮だけではありません。業界平均 KPI、競合ベンチマーク、マクロ経済指標まで射程に入れ、モデル式を Excel テンプレート化しておくと、次の案件では変数を置き換えるだけで即座に試算できます。ポイントは「入力欄を黄色セル一か所に集約」する設計。営業パーソンが自分で触って壊さない安心感があると、組織全体で数字を語る文化が根づきます。
データドリブンの営業活動については、こちらの記事で詳しく解説しています。
信頼構築コミュニケーション──速度 × 公開性 × 一貫性
提案営業で失注する最大要因は“沈黙”です。たとえ進捗が無くても「現状アップデート」を定期発信する担当者は、顧客内部で“情報のハブ”と認識されます。チャットツールで「既読保証」まで求めるとオーバーコミュニケーションに見えますが、メール+共有ノート+30 秒動画レターを組み合わせると受信側の負担は低いまま情報鮮度が保たれます。ここに後述の AI Shorts を組み込み「週次要約を話すスライドショー化」する運用を敷けば、ステークホルダー全員を“最新の同じ絵”の上に乗せることができます。
提案書・プレゼン資料を仕上げる──“読む資料”から“意思決定を起動する装置”へ
構造設計:45 分プレゼンなら 15‑Slide × 3‑Minute × 1‑Message
“45 分で勝負”と決まっているなら、スライドは 15 枚が上限です。理由は「質疑応答に最低 15 分を確保し、残り 30 分を 3 分 × 10 セクションで語れる設計が腹落ち率を最大化する」から。
資料を削ぎ落とす勇気が、提案営業の本質理解の深さを逆説的に証明します。

ビジュアル言語:因果を 1 枚で語る“パスチャート”
テキストを箇条書きで並べると、聞き手は“読む作業”にリソースを奪われます。代わりに「現状→課題→対策→成果」を一本の矢印でつなぐ“パスチャート”を採用すると、視覚が論理を誘導し、説明は補足で済む。複雑な数値はスパークラインで示し、詳細は Appendix に逃がす——これが経営層の脳内リソースと時間のバジェットに最適化されたビジュアル言語です。
ROI シミュレーション:ベースラインを疑似実測値で立てる
ROI 計算で“数値が大きく見えすぎる”と決裁者は警戒ゾーンに入ります。ここを突破するには、「自社実績/第三者データ/クライアント固有値」の3ソースを掛け合わせ、“疑似実測値” を基準に置くこと。具体的には次式を使います。
ROI = ((効果額 × 信頼係数) − 投資額) ÷ 投資額
信頼係数には 0.6〜0.9 の保守レンジを設定。説明時に「最悪シナリオでもプラス転換は12か月目」と示せば、リスクアラートを先回りでつぶせます。
バージョン管理:コメント権限と閲覧権限を分離せよ
ドキュメントリンクを配りながら「とりあえずコメントください」と一斉に依頼すると、修正指示が競合してカオスになります。最新版を守るコツは「閲覧権限の階層化」。
決裁者:閲覧のみ、実務担当:コメント可、営業チーム:編集可——このルールを最初に宣言すると、情報の洪水は一気に清流化します。修正依頼は表形式で「変更箇所/要望/承認可否/反映日」をトラッキングシート化し、提案書末尾の Appendix に添付すると履歴検索が最短で済みます。
資料を“話すスライドショー”に変換して提案力を最大化
資料を「語るコンテンツ」へ一瞬で昇華するクラウドサービス
AI Shorts は、PDF・PowerPoint・画像ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、
- 内容解析と要約:AI がページ構造とキーワードを抽出し、チャプターごとの骨子を生成
- 自動台本作成:抽出した骨子をもとに、ユーザーが設定した速度・時間尺のナレーション原稿を作成
- 高品質ナレーション付与:トーン・話速なども設定でき、ユーザーの好みや目的に合ったナレーションを生成
- ワンクリック書き出し:最短 1 分で“話すスライドショー”形式(MP4/URL共有)を出力
このようなことが可能になるのが、私たちエージェンテックのAIツール「AI Shrots」です。
AI Shortsが解決する三つの課題
- 準備時間のボトルネック
従来 3〜4 時間かかった「資料要約+録音+動画編集」が、AI Shorts では最短 1 分。提案内容を前日深夜までブラッシュアップできる。 - 決裁者の“閲覧コスト”
役員クラスが 30 枚の PDF を端から読む確率は低いが、2〜3 分の動画なら移動中でも視聴可能。稟議フローが加速する。 - ナレッジ継承の属人化
ベテランの“語り”をスライドショー化してアーカイブすれば、新人営業パーソンは音声とスライドの両方で学習でき、立ち上がり期間を短縮。
資料を「語るコンテンツ」へ一瞬で昇華するクラウドサービス
- ドラフト資料を投入:PDF/PPT/画像をアップロードするだけで台本を自動生成。
- 編集機能で微調整:“Why Change→Why Us→Why Now”の順に並び替え、語尾やトーンをターゲット別に最適化。
- ナレーション設定:声質・話速 を細かに切り替え可能。役員向けと現場向けを複製するときも 数十秒で完了。
- URL 共有&視聴ログ解析:閲覧回数・閲覧時間を分析し、次回商談の深掘り材料に。
AI探索機能で“瞬間FAQ”

複数の提案書・仕様書・ホワイトペーパーを AI Shorts に格納しておけば、商談中に飛んできた想定外の質問に対しても数クリックで回答を提示でき、信頼が途切れません。
導入ステップとKPI設計
PoC:既存提案書3件を動画化し、視聴完走率とクロージング速度を測定。
本番:全案件に導入し、平均準備工数と受注率を前年同期比で比較。
KPIを「準備時間△50%」「リードタイム△30%」「新人立ち上がり△40%」に設定すると、経営層に投資対効果が明確に伝わります。
AI Shorts を組み込むことで、提案営業の “質×速度×再現性” が一段階ブーストします。
まとめ:構造・データ・ストーリー・AIで提案型営業を再発明する
本稿が示した提案営業/提案型営業の成功要諦は次の四点に集約されます。
- 構造化ヒアリングで課題の真因を掘り当てる
- “Why Change → Why Us → Why Now”のストーリーで腹落ちを誘発する
- 数値モデルとビジュアル言語で意思決定を加速する
- AI Shortsで資料を“話すコンテンツ”へ昇華し、組織知を高速循環させる
明日から実践したい三つのアクション
- 仮説入り質問シートを準備して初回訪問で洞察を共創する。
- パスチャート1枚で現状→課題→解決策→成果を可視化し、45分プレゼンを15枚に収める。
- AI Shortで提案書を動画化し、視聴ログから刺さるポイントを逆算する。
「機能説明で終わる営業」から「成果を共創するビジネスパートナー」へ――その第一歩は、次の商談資料をアップデートすることから始まります。資料をアップロードし、AI Shortsが生成した“話すスライドショー”をチームで視聴してみてください。きっと、提案営業のスピードと質が同時に跳ね上がるはずです。
AI Shortsについてのお問い合わせは、以下のリンクからいつでもお気軽にお願いいたします。