営業×ソーシャルセリング:新規・既存を制する次世代アプローチ

近年、ビジネスコミュニケーションの主流がオンラインやSNSへと広がる中、「ソーシャルセリング」は営業活動を大きく変える存在として注目を集めています。従来の電話営業や飛び込み訪問だけでは、潜在顧客にアプローチするのが難しくなりつつある一方、インターネットを介した人脈形成や情報発信の手法が急速に発達してきたからです。

企業の購買担当者や個人事業主がSNSで情報収集する場面は増えており、自社サイトを訪れる前にSNS投稿や他者の口コミを参考にするケースも珍しくありません。これまでの営業手法では、見込み客の“潜在的な悩み”に気付く前に接点を作るのは困難でした。しかし、ソーシャルセリングではオンライン上で顧客の日常的な発言やコミュニティ参加の様子を把握し、自然なやりとりを通じて関係構築を図ることが可能になります。

営業×ソーシャルセリング:新規・既存を制する次世代アプローチ

本稿では、まず「新規顧客の獲得」に向けたソーシャルセリングの使い方を整理し、続いて「既存顧客」との関係をより深める方法を解説します。さらに、近年注目されるデジタル・AIツールとの連携例を紹介しながら、ソーシャルセリングを本格的に導入する際のポイントをまとめます。競合が激化する中で、読者の皆さんが効率的かつ持続的に成約率を高め、顧客との関係を強化する一助となれば幸いです。

新規顧客開拓を変えるソーシャルセリング

ソーシャルメディアを活用したリード発掘とアプローチ

ソーシャルセリングの代表的な特徴のひとつが、SNS上でのリード発掘です。たとえば、LinkedInやX(旧Twitter)、Facebookなどのプラットフォームで自社のサービス領域に関心を持ちそうな人を探したり、業界関連のトピックをフォローするなどして、“まだ出会っていない見込み客”と繋がるきっかけを作ることができます。

  • LinkedIn:ビジネス特化のSNSで、職種や業界を指定して検索しやすい。BtoB営業との相性が特に良い。
  • X:気軽に投稿・リプライできる特性を活かし、トレンドワードや業界ハッシュタグで発信し続けると、潜在顧客が自然に集まる場合がある。
  • Facebook:個人アカウント中心のコミュニティが多く、ユーザーの人物像や興味関心を具体的につかみやすい。

重要なのは、ただ繋がるだけでなく、自分のプロフィールや投稿内容を“営業色が強すぎない形”で整えることです。いきなり商品を押し売りするのではなく、業界関連の有益なニュースやノウハウを共有するなど、相手に「この人は役に立つ情報を発信している」と思ってもらえるよう努力する必要があります。

プロフィール整備や情報発信による“信頼の貯金”づくり

ソーシャルセリングでは、営業担当者自身がSNS上でどのような“パーソナルブランド”を築くかが鍵となります。相手をフォローする前に、まず自分のプロフィールや過去の投稿内容を整備しておき、「何が専門領域で、どんな価値を提供できるのか」がひと目でわかる形を作りましょう。

プロフィール整備や情報発信による“信頼の貯金”づくり
  • プロフィール画像・概要文:ビジネスに適した落ち着いた雰囲気で、かつ“何をしている人か”がわかる説明。
  • 投稿スタイル:ニュース共有や役立ち情報の提供を主軸にし、商品紹介や売り込み投稿は控えめにする。
  • 自己紹介記事のピン留め:SNSのトップに自己紹介記事やサービス概要を固定表示し、興味を持った相手がすぐに詳細を確認できるようにする。

こうした工夫は、“信頼の貯金”と呼ばれる考え方につながります。SNS上で有益な発信を継続していると、「この人が言うなら信用できる」という空気感が自然に醸成され、相手もDMやメッセージに抵抗なく応じやすくなるのです。企業公式アカウントとは違い、個人としてのリアリティを持ちながら、専門性や人柄を見せることがソーシャルセリングの肝と言えます。

DMやコメントでの自然な接点づくり

新規顧客にアプローチする際、SNS上で“いきなり”商品紹介を送りつけると、相手に警戒されるリスクが高まります。まずは、相手の投稿やプロフィールをきちんと読み込み、どの部分に共感できるか、どんな部分で役に立てそうかを踏まえてコメントやDMを送ることが重要です。

  • コメント活用:相手の投稿に対して、共感や質問を添える形でコメントを入れれば、自然と対話が生まれやすい。
  • DMの構成:最初の一言で“相手の立場を理解している”ことを示し、そのうえで「一度お話を伺いたい(または情報交換したい)」といった提案にとどめる。

あくまで相手の意思を尊重し、興味を持った相手に対して少しずつ情報を深堀りして共有していくアプローチこそが、ソーシャルセリングの理想的な姿です。特にBtoBの新規顧客ほど、SNSでのつながりをきっかけにオンライン商談に発展し、そのまま契約へ至るケースが増えています。

既存顧客との深い連携を育むソーシャルセリング

アフターサービス・アップセルをオンラインで強化する方法

既存顧客に対するアプローチもまた、SNSを活用することで大きく変わります。契約や導入が完了した後、フォローアップをどれだけ充実させるかで、アップセル(上位プランの提案)やリピート購入の確度は大きく左右されるためです。ソーシャルセリングの考え方を既存顧客に適用すれば、日頃のコミュニケーションがより密になり、結果的に顧客満足度が高まりやすくなります。

  • SNSアカウントでのフォロー:既存顧客とのつながりを個人アカウントや企業アカウントを通じて維持し、顧客がSNSで発信している困りごとや意見をキャッチしやすくする。
  • 有益な情報共有:新製品やキャンペーン情報だけでなく、業界ニュースやノウハウなどもSNSで共有し、「この会社との取引は自分たちの利益になる」と思ってもらえるよう工夫する。

既存顧客は、自社がどれだけ「自分たちの成功を応援しているか」を敏感に感じ取ります。SNSを通じたアフターサービスを積極的に行えば、“つながり”が途切れず、アップセルの提案や追加契約のタイミングを逃すリスクも下げられます。

SNSコミュニティ・グループを使った顧客同士の交流活性化

顧客が複数いる業種・業態であれば、SNS上でユーザーグループやコミュニティを作り、同じ商品・サービスの利用者同士をつなげる試みも効果的です。オンライン上で顧客同士が交流することで、導入ノウハウが共有されたり、新たな活用アイデアが生まれたりする可能性が広がります。

サポートや改善策を提示

また、企業側としては、こうしたグループ内で生じる質問や要望をいち早くキャッチし、サポートや改善策を提示できます。ユーザー同士の会話が活発になればなるほど、自社のサービスが一種の“プラットフォーム”として機能し、顧客との結びつきが強固になるのです。

クレームや要望をいち早く察知し、迅速に対応する仕組み

既存顧客が不満を抱えたり、トラブルに直面したりした場合、SNS上にその声が出ることも少なくありません。特にXやFacebookなどは、不満をつぶやきやすい環境と言えます。こうした投稿をソーシャルリスニングの仕組みでモニタリングし、即座に対処できれば、大きなクレームに発展する前に収束させることができます。

  • ソーシャルリスニング:「商品名」「ブランド名」「導入している業界用語」などのキーワードで常時検索し、顧客が困っている書き込みを発見しやすくする。
  • 迅速なフォロー:問題が見つかったらDMやコメント返信などで迅速に状況を伺い、解決へのステップを案内する。遅れるほどネガティブな印象が拡散しやすいため、スピードが命。

既存顧客がSNSでのやり取りを通じて「この会社は真剣にサポートしてくれる」と感じれば、離脱や契約解消のリスクは低下し、逆にロイヤルティが向上してアップセル・クロスセルの可能性が広がるでしょう。

デジタル&AIツールで広がるソーシャルセリングの可能性

従来の資料共有から“視聴データ”活用への変化

ソーシャルセリングを本格化させるには、SNSでのやり取りだけでなく、デジタル上の資料やコンテンツの使い方も重要になります。例えば、資料を送る際にただPDFを添付するだけでは、「相手がきちんと読んでくれたか」「どこで興味を失ったのか」を掴みにくいのが現実です。しかし、オンライン上で相手が行動を起こすと、ログやデータが残るため、そこから顧客の関心度合いや理解度を推測できます。

ソーシャルメディア上の投稿やコメントとの連動を意識し、「興味をもったら詳しい資料はこちら」と誘導する仕組みを作ることで、“情報を出しすぎない興味を引き出す補足資料を提示する”という段階的なアプローチが可能です。こうした手法を支えるのが、AIやデジタルツールによる閲覧データの可視化・分析です。

“話す営業資料”の活用例

ソーシャルセリングにおいても、どれだけ相手が資料を活用してくれているかを把握することは大きな課題となります。ここで注目されるのが、AIを活用した“話す営業資料”です。私たちエージェンテックが提供するAI Shorts は、既存のPDFやPowerPointなどをアップロードすると、自動で音声付きの動画資料に変換し、オンライン上で共有する仕組みを提供します。

  • 視聴完了率の計測
    相手が何分何秒の地点まで資料を視聴したか、最後まで見てもらえたかなどを営業担当者が確認可能。SNSでリンクをシェアすれば、興味を持った人がどの程度理解しようとしているかを数値で把握できます。
  • 負担の最小化
    動画編集やナレーションの手間をかけずに、AIが音声やスライドの切り替えを自動生成。営業担当者は“コンテンツの質”に専念できます。
  • SNSと連携した反応分析
    LinkedInやXの投稿でAI Shorts資料へのリンクをシェアすれば、SNSの反応(いいね、リポスト)やAI Shortsの視聴データなど、多角的に顧客の関心をとらえられます。

ソーシャルメディアから資料閲覧へシームレスにつなげるこの流れは、特に新規顧客に対して「簡単に見てもらいながら、しっかり内容を理解してもらう」うえで有効です。

視聴完了率やエンゲージメントをもとにリードを優先度付け

SNS上の反応(コメントやいいねの頻度)と、資料の視聴データを組み合わせることで、営業担当者はリードの優先度を効率的に振り分けられます。たとえば、以下のような行動を示す相手は「導入意欲が高い」と仮定し、早めにオンライン商談や個別相談を提案するとよいでしょう。

  • ソーシャルメディアで複数回反応を示し、DMでも積極的に質問している
  • “話す営業資料”を最後まで視聴してくれている
  • 追加の資料や見積もりを希望する連絡を自発的にくれる

ソーシャルセリングでは、押し売りではなく、相手が興味を示したタイミングで進めることが大切です。AIやデジタルツールを活用すれば、このタイミングを客観的に判断しやすくなります。

ソーシャルセリングをサポートする「AI Shorts」の製品詳細はこちらです。

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おわりに

ソーシャルセリングは、SNSを活用して見込み顧客との自然な関係づくりを行う新しい営業手法です。新規顧客の場合は、オンライン上で互いの専門領域や課題感を共有しながら信頼を醸成することが重要。一方、既存顧客に対しては、フォローアップやコミュニティ形成を通じて満足度を高め、継続的な取引や追加提案へスムーズに繋げられます。

さらに、SNS上での交流だけにとどまらず、AIやデジタル技術を組み合わせることで、営業活動の効率と精度は飛躍的に向上します。AI Shortsのようなツールを使えば、資料の視聴状況を定量的に把握できるため、興味度合いの高いリードへ優先的にアプローチすることが可能です。ソーシャルメディア経由で得られるエンゲージメントデータとも組み合わせれば、強いニーズを持つ相手を見逃しにくくなります。

とはいえ、最後まで結果を左右するのは、投稿やDMをきっかけに実際の商談へとステップアップさせる際の人間らしい対話です。デジタル技術によって顧客との接点は増やせる一方、「どのように話を深めるか」「相手の疑問や不安をどう解消するか」は、営業担当者のコミュニケーション力にかかっています。オンライン化やAI活用が進むほど、“信頼して相談できる存在”としての営業パーソンの重要性が再認識されるでしょう。

新規・既存の双方に対して、ソーシャルセリングを取り入れながらデジタルツールを賢く活用すれば、見込み度の高い顧客に短期間でアプローチし続けることが可能になります。顧客とのやり取りが円滑化し、提案が断られにくい“自然な関係”を築きやすくなるのです。ぜひ、本記事で紹介したヒントを参考に、自社の営業スタイルをアップデートし、ソーシャルメディアの持つ大きな可能性を引き出してみてください。