「最後のひと言」が言えずに商談を逃していませんか?
「関係は良好なのに、なぜか決まらない」
「競合にひっくり返される恐怖で踏み込めない」
そんな不安を抱える営業担当者は少なくありません。事実、商談の歩留まりの約7割はクロージング時の“心理的つまずき”に起因すると言われています。
本記事では BtoB 営業で成果が“頭打ち”になりがちな壁を破るためのクロージング術 を、基本から応用・NG例・契約後フォローまで体系的に解説します。
読了後には、すぐに試せる具体的セリフと行動イメージが手元に残り、今日の商談から成約率を底上げできるはずです。

クロージングの基礎知識
クロージングの定義と営業プロセス内の位置づけ
クロージングとは、顧客に最終的な「Yes」を引き出す意思決定支援行為です。ヒアリング・提案で磨き上げた価値を、契約という形に“固定”する瞬間とも言えます。
なぜクロージングが難しいのか
- 心理的コストの高さ:顧客は「失敗したらどうしよう」という損失回避バイアスに縛られがち。
- 決裁構造の複雑化:BtoBでは稟議フローの多段化により、担当者だけで決められない。
- 比較情報の氾濫:競合・レビュー・SNSが意思決定を遅らせる。
これらの壁を乗り越えるには、準備・タイミング・テクニック の三位一体が欠かせません。
成功を呼び込む事前準備
BANT を“クロージング仕様”で深掘り
項目 | 鍵となる質問例 | 仕上げポイント |
---|---|---|
Budget | 「今年度の予算確定時期は?」 | 支払スキームも確認し、決裁手続きの摩擦を事前除去 |
Authority | 「ご承認フロー上、最終決裁者はどなたでしょう?」 | 決裁者向け要約資料を先回りで用意 |
Needs | 「現状のKPIを達成できない最大要因は?」 | “解決できる未来”を具体的数字で言語化 |
Time frame | 「運用開始のリミットはいつですか?」 | 導入後逆算スケジュールを可視化 |
信頼関係を築く三原則
- 透明性:価格・制約条件を曖昧にしない。
- 双方向性:節目ごとに“理解度チェック”を挟み、顧客に発言機会を与える。
- 一貫性:メール・資料・会話でメッセージのブレをなくす。
タイミングを見極める4つのサイン
購入意欲サイン | 具体的発言例 |
---|---|
予算・ROI の話題に自発的に触れる | 「この価格なら◯年で回収できますか?」 |
導入後フローを具体的に質問 | 「トレーニングは何時間くらい必要ですか?」 |
社内展開を想像し始める | 「別部署も一緒に使えますか?」 |
競合比較で優位点を確認 | 「A社との違いはサポート体制ですよね?」 |
サインを捉えたら24時間以内にクロージング打診するのが鉄則です。
クロージング効果を高めるテクニック7選
以下すべてに セリフ例/心理的根拠/使用シーン をセットで示します。適宜組み合わせてください。
直接確認法
- セリフ例:「本日の内容で進めても大丈夫でしょうか?」
- 心理:質問に答えると自己一貫性を保とうとする(コミットメント)。
- シーン:課題と解決策がクリアになった直後。
二択提示法(A or B)
- セリフ:「初期費用無料プランと月額割引プラン、どちらがフィットしますか?」
- 心理:選択肢フレーミングで“購入するか否か”を“どれにするか”へ転換。
- シーン:価格への抵抗感は低いが迷いが残るとき。
If クロージング
- セリフ:「もし4月までにリリースできれば、貴社の新年度施策にも間に合いますね。」
- 心理:仮定法で将来利益を視覚化し、損失回避を逆転利用。
- シーン:導入時期がネックになりやすい案件。
松竹梅プレゼン
- セリフ:「機能フル搭載のPro、必要機能に絞ったStandard、基盤のみのLiteがございます。」
- 心理:極端回避性により中位プランが選ばれやすい。
- シーン:価格レンジが広い SaaS/ハードウェア商材。
損失回避スキャフォルド
- セリフ:「先着10社限定の導入支援が今月で終了予定です。」
- 心理:人は“得”より“損”を2倍以上強く避ける。
- シーン:時限インセンティブを設計できるキャンペーン中。
ドア・イン・ザ・フェイス
- セリフ:「全社ライセンス(1,000ID)ですと◯円ですが、まずは100IDからご一緒しましょう。」
- 心理:譲歩の返報性。大きな要求を断ると“借り”を感じる。
- シーン:導入規模で迷う大手顧客。
ゴールデン・サイレンス
- セリフ:提案後は一呼吸置き、視線で合図。
- 心理:沈黙に耐えきれず人は発話し、自己説得が促進される。
- シーン:要点説明後、“あと一押し”の空気が漂う場面。
クロージングに関するよくある質問(FAQ)
質問 | 回答の要点 |
---|---|
Q1. 強く背中を押すと嫌われませんか? | “提案理由”と“選択肢”を示し、顧客主導感を尊重すれば押し売りにはならない。 |
Q2. 稟議が長期化したときの打開策は? | 決裁者用 1 ページ要約と ROI 試算シートを渡し、担当者の“内部営業”を支援する。 |
Q3. 値引き要求が来たらどう交渉する? | 単なる値引きではなく「数量」「契約期間」など交換条件をセットにする。 |
Q4. オンライン商談でもゴールデンサイレンスは有効? | 有効。発話タイムラグが通常より長いので 5‑6 秒 は無言を保つと効果的。 |
Q5. 決裁者不在の初回商談でクロージングしても良い? | まずは“仮承認”を得て次回決裁者参加の場を設定する。フライング成約はリスク。 |
クロージングで避けるべき NG 行動
- 過剰な心理操作
テクニックの乱用は“仕掛けられた”印象を与え、長期関係を損なう。 - 自社都合の押し売り
顧客課題と無関係な機能追加・値上げは信頼を毀損。 - 結論先送りの容認
「検討してください」で終わると、商談温度は時間経過とともに指数関数的に低下。必ず Next Action を具体化する。
成約後フォローで LTV を最大化する
オンボーディングプログラム
- キックオフ → 操作研修 → 効果測定レビューを 90 日以内 に実施。
- 初期価値実感を早めることが解約率低下の最短路。
定期サクセスレビュー
四半期ごとに KPI 進捗を可視化し、追加利用シーンを提案。アップセル額の平均 1.6 倍 が期待できる。
エンゲージメント強化施策
ユーザ会・導入事例インタビューで顧客を ヒーロー 化し、リファラルを創出する。
まとめ――あなた自身がクロージングの“最終決裁者”になる
クロージングとは、単なる「押しの技術」ではなく、顧客が安心して意思決定できる環境をデザインする行為です。
準備(BANT+信頼構築)→ タイミング察知 → 7 つのテクニックを適切に使い分け → NG 回避 → 成約後フォロー――。
この一連の流れを今日の商談から実践すれば、数字は確実に変わります。さあ、次に訪れる“決定の瞬間”を逃さず、あなたのクロージングで顧客の未来を一歩前へ進めてください。